2005年 09月 16日
「釣りキチ三平」の中で最も印象に残っている話のひとつに ブルー・マーリン 「デビル・ソード」との戦いがある。 片腕を失いながらも人生を懸けて戦うエイハブ船長の姿には 幼心に釣りとはいえ命のやり取りだということを教えられたような気がする。 (ちょっと大げさか) 結局「デビル・ソード」は観念するのだが その満身創痍になりながらも 最後まで人間と戦い抜こうとする気高い姿に 畏敬の念を覚えなかった読者はいなかっただろうと思う。 (これまた大げさか!?) そんな想いから マーリンを釣るということはただ事ではないと思っていたのだが・・・ その機会は突然、偶然、やってきた。 マデイラという大西洋の島に行った時 港でたまたま見つけた店。 ブルーマーリンの看板が高々と掲げられている。 「まさか・・・」 半信半疑で聞いてみたところ やはりマーリンのトローリング、 一日クルーザー&タックル貸切、昼食付きで140ユーロ・・・迷うはずもない。 かくして翌日、 船上の男となったのであった。 気持ちよく晴れあがったその日 どこまでも青い空、 ウルトラマリンの絵の具そのものが満ち溢れたような青い海・・・ 憧れていたファイティングシート、そしてこのタックルの頼もしいこと! 見るもの・聞くもの・感じるものすべてが日常生活から乖離していた。 そしてこのルアーのサイズ! ラインというより棒の様なライン・・・ さんざん一人で盛り上がった挙句、 一時間程で船酔いにてダウン。 ぐったりと椅子にもたれ 暑さも加わり朦朧とした意識の中 ひたすらルアーを4つ引っ張りまわしながらヒットを待つ・・・。 船頭さんはやる気満々で鳥山を追跡、 右へ左へ 船は走り廻る・・・ ああ 吐きそう・・・ 半日ほど走り回っただろうか 照りつける日差しの中 半分意識を失いかけていたその時 突然 強烈なリールの逆転音が響いた。 ヒット!? え? どしたらいいの?! すごい勢いで船頭さんが駆け降りてきた 「マリーンだ!」 船頭さん、私以上に興奮している。 鬼のような形相だ。 怒鳴り散らすように 「早く座れ!」 「ベルト!」 「竿! 竿持って!」 (ポルトガル語なので これは意訳です) 「え? え? え?」 ファイトが始まった。 といっても ひたすら耐えるのみ。 ラインはどんどん引き出されていく。 海原を切り裂くようにラインが走りまわる。 いったん走り出すと数百メートルは一気に走る。 縦横無尽に走り回る・・・潜る・・・さらに潜る・・・ すごい突っ込みを見せたかと思えば 突然のテールウォーク・・・! 「でかっ!」 初めて水面上に姿を見せた魚は 間違いなくマーリンだ。 7~80メートル程離れていたと思うが 水面に尾びれが叩きつけられる音が響いてくる。 船頭さんもあいかわらず大興奮、 ものすごい剣幕で 「今だ 巻け!」 「巻くな!」 「ダメダメ! ああっ! それじゃバレる!!」 怒声連発、怒られているようだ。 きっと自分も必死だったのだと思う。 やりとり中のことは正直、あまり覚えていない。 当然ながら写真など撮れやしない。 ヒットから30分くらい経っただろうか 魚が近づいてきたらしく 船頭さんがギャフを持ち出してきた。 魚が見える。 水面近くをゆっくりと こちらを見据えながら 近づいてくる。 船頭さんがギャフを掛けた。 脱力感と達成感が心の中で交じり合う。 ここのルールで 保護のため 魚を船上に揚げることはできない。 魚はすべてリリースされる。 深い青の中 白銀に輝く魚体にそっと触れた。 目があったような気がした。 感謝とお詫びの想いが交錯し 言葉は出なかった。
by paranoia1970
| 2005-09-16 21:03
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